Wize Sound、コンポーザーの矢川です。



今回はピッチカートについてのお話。



ピッチカートという奏法をご存じでしょうか?


ピッチカートというのは主に、ヴァイオリンやヴィオラなどの弦楽器でよく使われる奏法です。



通常、弦楽器は弓によって弦を擦ることにより音を出しますが、ピッチカートの場合は指で弦を持ちあげ、離すことで音を出します。


ハープや琴のような、アタック(音の出始め)が強く、時間とともに減衰する音が出るのが特徴ですね。


このピッチカートという奏法、オーケストラでは、静かなパートの伴奏などでよく用いられます。


とくにオペラや歌曲などで一人が歌うときに使われることがあるのが特徴的でこれについて話したいです。


基本的に、歌の伴奏に求められる役割は

  1. 拍、小節を感じさせたい
  2. 和音を感じさせたい
  3. 歌の邪魔をしない

といったところです。



例えばロックバンドについて考えてみましょう。


ライブに行ってみたことがあるとわかると思いますが、伴奏が轟音のときの歌はメロディーなどは聞こえても、歌詞は多少聞き取りづらくなることが多いと思います。


ロックという音楽はもともと歌詞を重視するものでもないこともあり、全体としてパワフルなサウンドが出ていれば良いということもあって
歌詞が多少聞こえづらくても問題がないわけですね。


オペラで歌に伴奏をつけるときも似たようなことが起きます。
ストリングスなどで伸ばす音を主体に伴奏をつけると、歌、とくに歌詞が聞こえづらくなりやすいです。
情緒的な様子を重視する場合、これは問題になります


こういうときに便利なのがピッチカートだったりします。


ピッチカートで小節の頭に和音を鳴らすことにより、伴奏の支えも作りつつ、
リズムが整えられます。

また、ピッチカートの音は減衰するので、鳴りだしたタイミングは歌が一瞬聞こえづらくはなるはずですが、
その後は伴奏の音量が大幅にさがり、歌がとても聞こえやすくなります。



和音の音が常になっているわけじゃなくても、鳴らした音の印象はあとに残り、伴奏として成立するわけですね。



今は歌を例に出して説明しましたが、あまり大きい音のでない木管楽器が主旋律をとるときなどにも、
ピッチカートによる伴奏は好んで使われます。



基本的にはまずピッチカートの音が前にでて、そしてその後さっと引くので、ちゃんと存在感がありつつも邪魔にならない伴奏になるわけですね。

歌と伴奏の住み分け、というのは「音の高さ」で考えられる場合が多いですが、この場合、「時間」で住み分けているわけです。

常に伴奏の音が出続けるわけでないので、静かで主旋律を邪魔せず、それでいてちゃんと意味のある伴奏が作れるわけですね。



静かな伴奏に便利なピッチカート、時には注目して聞いてみると面白そうですね。





Wize Sound 矢川信二