皆様おはようございます。

アクトワンにてサウンドエンジニアをさせて頂いております、山田です。

今回は、最近、アクトワンのマイクを使うレッスンに意外と知られていないんだな、と思ったことを一つコラムに。

ミュージシャンも、役者も、こんにちのお仕事とは切っても切り離せない、

”マイクに向かう時の注意点”についてお話をします。











1.マイクとの距離(近接効果)



マイクとの距離。 こちらは特に、レコーディング入門系のサイトや本にて良く話題に上がる項目ですね。

結局、音源収録のための距離というのであれば、”適当な距離で”という曖昧な答えが結論なのですが、今回はターゲットを絞って、声に特化をさせて説明させていただきます。




なぜ距離を気にしなければならないのか

マイクは、実はそこまで難しいものではありません。

マイクとは、基本構造として、“空気の振動を電気信号に変える”ものであるととらえてください。


では、どうやって空気の振動電気信号に変えているのか。

マイクによっても仕組みは変わります。簡単に、わかりやすく。

ダイナミックマイク


ダイナミックマイクの一例(SHURE SM58)

ダイナミックマイクは、ムービングコイル式というシステムを使った電気信号の取り出し方をしています。

暴力的に説明します。

「中に、ちょっと動くなかなかデカイ磁石が入ってるから、声(空気の振動)で動かしてね。

君が動かした磁石のはたらきを、電磁石の仕組みを使って電気信号にするよ。」

というものです。暴力的に説明しました。ありがとうございます。




コンデンサーマイク

コンデンサーマイクの一例(NEUMANN U87Ai)



正直、コンデンサーマイクは簡単に説明するのが難しいです。

コンデンサーマイクの中にも、同じ原理で動くが少し違う、という種類があるのですが、基本動き方は一緒ですので、一緒くたにしちゃいます。

恒例山田の暴力的な説明で頑張ります。見ててね。



「電気の通った金属の膜をピンピンに貼ったから、それを声(空気の振動)で揺らしてね。
実はそのすぐ裏にも電気の通った金属があるんだ。

君が膜を震わせると、その裏の金属との間に電極差が生まれるんだ。そうすると、二つに繋いだコンデンサーの中身の電圧が変化するんだ。

その電圧の変化を電気信号として出力するよ!」



と、いうことです。 説明がめっちゃ難しい。これが限界です。








と、ここまでグダグダ半分専門的なことを説明してきましたが、

結局のところ、僕たちがアプローチをしているのは、何かを空気の振動を使って動かしてるだけなんです。

あとは完全にマイクの仕事で、それに当たって気をつけることが、

空気の振動をどう当てるか。





空気の振動は、早いうちにどんどん減衰してゆきます。

耳のすぐ近くで喋られるのと、目の前で喋られるのとでは、聴感上全く違うはずです。

人間の薄い耳の鼓膜ですら顕著に出るものを、かたやマイクでは、鼓膜よりも質量のある金属や磁石を司る必要があります。

マイクでも、人の耳でも、結局のところ、空気の振動を察知するといった点ではそこまで変わりありません。

そこで出てくるワードが、近接効果です。

近接効果

端的に言ってしまえば、マイクに近づけば近づくほど低い音が増してゆく現象のことを言います。

これは、どのパターンでも一緒で、人の耳もマイクも変わりません

近接効果には良い点も悪い点もあり、うまく扱えば、そのマイクの特性が十分に発揮された音を録ることができます。

単純に、音源(今回の場合、声。つまり口内。)に近ければ近いほど低音も高音も含まれている新鮮な音が出ているので、発声法に違いはあるとしても、山田はそこが一番、人間の感じる”自然”な音だと思っています。

逆にそのマイクの特性を理解した上で、距離によって様々な音を捉えることができたり。

力強く、実のある音が欲しい時はマイクに近く寄って収録。

線の細い音が欲しい時は離れて収録。

近接効果の存在を知っているだけで、様々なテクニックを行使することができるので、色々と試してもらうと良いと思います!

また違う視点で、マイクの構造や大きさによりそのマイクの音もガラッと変わってきます。近接効果を駆使できるマイク、できないマイクもあるので、色々試してください。高額マイク沼への道として、紹介させていただきます。







マイクとの角度

マイクの集音の仕方の一つとして、距離と同列に語られるべきなのが、角度。

前述した、各マイクの動かす部分をダイアフラムと一括に呼ぶとします。

そのダイアフラムに音を当てる角度によっても、音はガラッと変わっていきます。

詳しく説明をする場合、空気振動の動き方(反射/屈折/回折/浸透/干渉があります)も説明しなければならないので、かなり端折らせていただきます





まずマイクの指向性

左から 無指向性/単一指向性/ 双指向性
(https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/whatis/02.htmlより引用)

マイクには、マイクの向いている方向に準じてどの方向の音を収録できるか決めて作られてきます。

基本的には単一指向性(上記の画像の中央)にての収録になると思います。

上記の画像を見ると、「なんなら横から声を当てても大丈夫じゃね…?」と思われがちですが、全然違います

なぜなら、ダイアフラムの向きは一定だからです。

ダイアフラムは斜めには向いていません。いつでも直立不動です。俺もそうでありたい。

詳しい説明をすると、上記の反射だか屈折だかを解説しながらが必要なので、割愛をさせて頂きます。 詳しく知りたい奇特な方がいらっしゃったら、直接山田へご連絡を…!!





…と、半分説明不足になってしまってる感も否めないので、実例を出させて頂きます!(言い訳)

今記事を踏まえた上で聴いていただけると、少しだけ理解を深めることができると思います…!






距離、角度パターン実録集

※距離が離れると必然的に音量は小さくなります。 今回は音質にフォーカスを当てているので、音量は揃えてあります。

※”近く録った方が、S/N比(信号に対するノイズの値)が悪くなる意”も含めて、ノイズ処理は一切しておりません。

※ダイナミックマイク「Lewitt MTP550」にて収録しております。

※山田の声です。




それでは早速。




距離 1cmでの収録

角度0°(マイク正面)

距離1cm 角度0°

直角と言っていますが、実際は正面です。

しっかりとマイク本来の音質を活かせている距離だと思っています。


角度45°(斜めから収録)

距離1cm 角度45°

低音が薄れています。が、距離感はしっかり掴めますね。




距離 5cmでの収録

角度0°(マイク正面)

距離5cm 角度0°

たった4cm離れるだけでここまで印象が変わってきます。


角度45°(斜めから収録)

距離5cm 角度45°

この距離になると、角度が0°から変わるたび、距離が離れて聞こえるようになってゆきます




距離 10cmでの収録

角度0°(マイク正面)


距離10cm 角度0°

ダイナミックマイクにおいて10cmは大抵のことがない限り、収録範疇外です。 

S/N比もだいぶ悪くなるし、相当静かな部屋で、やっと効果的に使えるレベルです。


角度45°(斜めから収録)

距離10cm 角度45°

こちらも上記感想と同意。

だいぶ「スィー」というノイズが増えました。

声の上部分のカリカリコリコリした部分がかなり強調され、この音が欲しい場合はコンデンサーマイクを用いた方が扱いやすいし、安心かな、という感じ。







と、いった具合で変わってゆきます。

どれが良いのかは、その人の性別、体格、声色、発声によって随時変わっていくので、一概には言えません。

が、自分の声のスウィートポイントがわからないうちは、「とりあえず近づいて正面に声を出せ!」と進言させて頂きます。

利点としては、少なくともあとで編集が効くということがとても大きく、まず”編集ができる”という時点でNGは出ないと思います。

もちろん、編集じゃどうにもならないこともありますが、離れて録られたノイズの多い細い音よりかは十分幅が効きます。圧倒的に利点が大きいです。







まとめ

さて、今回はマイクとの距離感についてお話をさせて頂きました。

結局は、”正面からなるべく近づいて録れ!”という所に行き着きましたね。

まず、それで試し、そこから適宜、自身の声のスウィートスポットを探ってゆくのが良いと思われます。


大声を出す場合、音が割れないか心配になることもあるかと思いますが、そこはレコーディングエンジニアの腕の見せ所。


初心者の方にも一貫して言えることですが、録音レベルはきちんと取りましょう。

出すことのできる一番大きい声がマイクに入ったとき、ギリ割れないくらいの音量で録るのがセオリーです。


宅録するときは誰もがレコーディングエンジニア。ここまでが、良い音を録る秘訣です。

<writer / Shigeru Yamada(Wize Sound)>